一箇所

眠気の中に少しの不快感を覚え、瞼を下ろす。混ぜ込んだのは黒い、皿の上には猫、椀の内に塗られたベルベット、思い出す。意味を見出すことが負けだった。毎日繰り返して過去に浸っている。赤黒い海になった過去に溺れている。膿をまたひとつ増やしている。つついて痛めている。思い出していない。襲いかかってくる。無意識をものともしない様子で迫ってくる。その手から逃れることは諦めた。けれど感覚を遮断することならできた。気にしない振りをした。何一つ変わっていないのに気が楽になっている。それも見当違いだったと思う。何も変わらない。変わる気もない。どうしようもない。解決策はない。私が私でいる限り無理なこと。もっと生きやすい器に落ちたらよかった。転け方を間違えた。